適当に着てもオシャレになる人とならない人


意識せずともオシャレな服装になる人がいる。

顔が良いとかスタイルが良いからとか、そういうのではなく「クローゼットから適当に選んだだけだよ」と言いながら、色やサイズや着こなしが上手にできている人。

中学時代に仲の良かった女の子がそういう子だった。

大学生のある日、原宿でファッションスナップに遭ったという。

いきなり写真を撮られて「すみません。non-noなんですが、写真撮らせてもらえませんか?」と声を掛けられて「え、イヤです」と断った。

「それじゃ、このまま(さっき撮った適当な写真を)掲載させてもらいますね」

「困ります」

「それじゃ、ちゃんと撮影させてください」と半ば脅迫され、いやいやながら応じた。

「これ、雑誌に乗るんですか?」と訊くと

「沢山撮った中から選ぶので、それはわかりません」と言われて、少し安心したものの、結局は半ページ使った大きな扱いで掲載された。

「載ってたの見たよ」と連絡すると

「本当に迷惑。あれ、友達の家での飲み会帰りだったの。着ていた服のブランドのアンケートには全部知りませんて書いたのに、(編集部が)調べて書いてあるし、友達みんなに『これ、あんたが一番手抜きしてるときの恰好じゃんwww』て突っ込まれるし」と、本当に嫌がっていた。

その時の恰好は、アウトドアブランドのフリースを着ての、パンツスタイルであったと記憶している。確かにその辺をウロウロするだけの恰好に見えた。それでも、とってもオシャレに見えた。

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目利き


道を通りながら、前を通過した飲食店から美味しそうな雰囲気を感じることがある。
気になるので検索して調べると、良店であろうことがかなりの割合となってきた。
その、店から感じる美味しそうな雰囲気を、端的に「オーラ」と表現しているのだが、先日「店のオーラってなんですか?」と質問された。

ラーメン王石神秀幸氏はラーメン屋を見て美味しいかどうかわかるようになっているという。
ある食べ歩き人は「美味しい店の前に来るとメガネが曇る」という表現を使う。
尊敬する中学からの友人も、店の前や店に入った段階で「この店、やるな」とか「いいにおい(ムード)があるね」という。

積み重ねてきた経験と観察眼によって、美味しい店を察知できるようになっているのであるが、それらは複雑で複合的なものであって、明文化できるものではない。
挙げていくならば、単純に漂ってくる匂いだったり、店構えへの配慮だったり、客が美味しく食べている雰囲気だったり。

ファッションで言えば、パッと見て服の仕立ての良さを感じられるかどうか、みたいなところがある。
わからない人にはまるでわからないものだ。
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smoothday 着心地の良さを発見する服


しばらく前にsmoothdayというブランドと共に、ここの服を創る杉原淳史というデザイナーに出逢った。

ファッションに飽いていた自分が、ファッションを見直す事になった。

かつて色んなブランドの服を”買ってみて”いた。ブランドのスタンプラリーみたいな感じだった。最も多く買った同じブランドの服でも4,5点だったと思う。ところが今一番多いのはsmoothdayだ。15点を超える

smoothdayのことを簡単に書く。詳しくはネットで漁れば出てくる。
文化服装学院を卒業した杉原淳史氏は、サンローラン等でモデリストとして働いた。
その時に、小野莫大小工業の布と出逢ったという。
勤務先の他のデザイナーが、ここの生地を使った服を着ていたらしい。
(生地の端切れが出た時に、真っ先に自分用の服を作りたがる生地でもあったらしい)
「なんと素晴らしい生地だ!でもこんな値段では、みんなが買えやしない。
それではいずれ、こんな素晴らしい生地が廃れてしまう?そんなことはあってはならない」
ファクトリーブランドであれば、この極上の高級生地でもリーズナブルに世に出せる。
そう思って彼は小野莫大小に自分を雇ってデザインさせてくれないかと直談判した。
(実際、その品質からすれば驚くほど抑えられた値段である)
小野莫大小の生地を使うファクトリーブランドとしてsmoothdayを創立した。
今も彼は、小野莫大小工業の一従業員である。

smoothdayの服の最大の特徴は着心地である。
彼は食べ物に喩えた。
「美味しいものって食べたらわかるじゃないですか。うちの服もそうなんです」
試着すると、みんなその言葉の意味を理解する。
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居酒屋ないし和食屋における酒と料理の関係について


最初に断っておきたいが、当記事での飲食店批評は、列挙する店含め、既存の店を貶める意図は皆無である。

近年、都内では日本酒揃えの良いお店が大人気だ。
料理よりも酒に重心を置いたスタイルは、古来日本では「酒場」といったはずだ。(欧米ならパブ、あるいはバルか)
しかし、酩酊を介した交流場であり、美酒利き処であったわけではないだろう。
美酒普及に伴う新しい業態かも知れない。しかし私はそのあり方に納得がいっていない。
ほとんどの店が、料理が弱い。そして酒に店からの提案が無く「好きなのを好きなように飲んで下さい」である。
欧米の食事ではどうだろうか。料理に合うワインを提案するではないか。
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sol-design休止の理由


 

この冬、札幌へ行くにあたり、久しぶりにsol-designのトレーナーを着た。(カットソーは毎年着ている)

(かつてのsol-design記事

寒冬の札幌をものともしない保温力に驚き「そうだ、東京で着るには熱いから着てなかったんだ」と、着ていなかった理由を思い出した。

コットンなのに、完全に防寒着。

 

カットソーを買いたいという方も現れ、個人的にもこのトレーナーの再購入したいと思い、sol-designの方に在庫はあるかと葉書を送ったが返事は無かった。

戻ってこないので届いてはいるのだろうと、電話をしたところ、通じた。

 

新しいお仕事に取り組まれているようで、お忙しいようす。

カットソーのことをうかがったが、縫製工場に商品をパクられたので製造を止めたそうだ。

ほんの少しデザインを変え、S/M展開の上千円引きでネット販売されたという。これでは商売にならない。

Tシャツで有名な四国の工場だそう。工場に問い詰めると「アパレルではよくあることですから」としれっと言われたとか。

その後、知人を頼りオリジナルの生地を持ち込んで縫製を依頼したところ「この生地をうちにも譲ってくれないか」と工場側から持ちかけられたが、パクりを懸念して断ったところ「それならおたくの商品製造はしない」と決裂。

その後いくつも工場を探したが、そこ程の縫製技術のあるところが見付からず、休止に至ったとのこと。

「UGさんが、ブログで紹介して下さったおかげで、縫製品質のハードルがあがってしまって…

あれ以上でなければ、sol-designの商品として販売できませんから」

と苦笑いされていた。

 

工場の裏切りによって、価値ある商品が失われたのは、とても残念なことだ。

しかし、今後もシャツ等の商品開発は考えているそう。それを楽しみにしている。

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小布施酒造と一桁酵母


長野県小布施町の小布施酒造。
ここは、むしろワイン好きの間で評価の高い小布施ワイナリーとしての方が有名ですが。ワイン作りを休む冬季に、ひっそりと清酒を造っています。
元々は清酒蔵だったそうですし。

ワイン屋が日本酒なんて、という向きもあるようですが、ところがどうして、最近では百貨店でも扱われたりするくらい、良く出来た酒です。
どれも酸が高く、切れよく、華やいだ香りは控えめの傾向があります。
ワインボトルに詰められていて、ラベルもワインラベルをベースにしていてオシャレなので、ビジュアル的にも素敵な日本酒です。
私もここの清酒を4年前に知ってから、毎年追い続けています。
そうやってずっと追い続けている酒はここと、水尾しかありません。
オススメ→水尾 特別純米 金紋錦仕込み 1800ml

 

さて、私が知った頃から「日本酒にもテロワールの概念を」と自家栽培した美山錦という酒米で清酒を醸造していました。
自家栽培米と県内で流通している美山錦と、そしてそれぞれに吟醸酵母と7号酵母の酒がありました。
そして3年程前から、この蔵の懐古醸造が始まりました。
生モト造りと呼ばれる、古い造りでの醸造も開始したのです。
そして通常3割以上は削るという精米でも、1割に抑えた低精米での造りも始めました。
昔は精米技術も未熟だった、ということでしょう。
「いいお米で、昔の美味しい酒を造ろう」という考えのようです。

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久々の東コレ見学感想2012秋


2年ぶりに、東京コレクションを見に行った。

投稿の間隔から、かなりファッション離れを起こしていることはおわかりだと思う。

いくつも理由はあるが「ファッションが価値を持つコミュニティに生きていない」ことが一番の理由だと思う。

学生時代はみんな立場が同等であり、異性にモテることに大きな動機があり、そのために見た目のカッコよさと面白さが価値を持っている。カッコよさを大きく補強するのがファッションだ。

そして自分の望む友人コミュニティを選択できる。ファッションはそのエントリーチケットだ。

ところが社会人になると、仕事での人付き合いが主になり、そこでは冒険的な服装は価値を失う。むしろ評価を貶めかねない。

また、人の評価指標が、言動と業務能力へ大きく変化する。特に「仕事できる」「仕事できない」での人物評価は恐ろしい程強力だ。

ファッションは保守的を求められ、その上で人物評価のゲートではあるけれど、しかしそれだけでしか無くなる。

日本の一般社会人には服飾文化が存在しないからだ。

ファッションを評価できる人間が役職者にいないのだから、それは価値を持たなくなる。

所長、支店長、部長らが吊しの安物スーツを着て、ポリ生地のシャツを着て、履き捨ての合皮靴で仕事しているのだから、これで”グローバル”だとか言い出したら、笑い話に……してはいけない。

そんなわけで、ファッションへの主体的な興味は失せてしまっている。

で、枕が長くなったが、東京コレクションの話。

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ノーザンプトン シューファクトリーアウトレット購入記


(画像はクリックで大きくなります) (旅行時1£=126円)

Twitterで随時つぶやいていましたが、ノーザンプトンのファクトリーアウトレットまで革靴を買いに行ってきました。

参考にしたのはこちらの地図(pdf)

GoogleMAPでは通りまでしか出てこないので、ストリートビューで確認しておくといいですね。

ノーザンプトン駅から回れるのは、チャーチ Church’s、トリッカーズ Tricker’s、クロケット&ジョーンズ Crockett & Jones、ジョン・ロブ John Lobb、エドワード・グリーン Edward Green

です。Cheney、GRENSON、Barkerは車でないと行けなそうです。

クロケットは金曜の午前中と土曜の午後しか営業していません。エドグリは事前予約が必要らしいです。

今回は土曜朝のフライトで帰国でしたので、旅行最終日の2012/10/5 の金曜に行きました。 “ノーザンプトン シューファクトリーアウトレット購入記” の続きを読む

アンリアルなファッション~ANREALAGE~


東京オペラシティ アートギャラリーでの「感じる服 考える服」を見てきました。
内容的には、こちらを見れば充分かなと思います。弐代目・青い日記帳「感じる服 考える服」
服の展示数はプアです。SASQUATCH fabrixは服じゃないし。

色々疑問はあったのですが、サブタイトルが東京ファッションの現在形とあり、なるほどねと思いました。
東京では過去にもこういうデザインやっているとこあったし。

さて、中でも特に気になったのはANREALAGE。
real、unreal、ageをミックスしたネーミングだそうですが、実物という意味ではリアルですが、ファッションとしてはアンリアルだなと思いました。

彼の作品は”服”ではありますが、残念ながら”ファッション”には成り得ていないなと思います。
ファッションは人が生活するときに着るものです。
人が着て、動いたときに完成するものです。

ANREALAGEは、それが成り立っていない。
2009年春夏の「◯△□」は、球体、三角錐、立方体に合わせた時にわかる服。
その後「凹凸」のコレクションでも、デコボコした型に嵌めた時にわかる服。

過去のコレクションを見ると、そのような或る規定の型に嵌めたときに完成する服ばかりを作っています。

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モードを鬻(ひさ)ぐ者と贖(あがな)う者と


計画的陳腐化というのは、マーケティングの用語であり手法。

企業は、標的市場にプロダクト導入していく立場にありますが、この陳腐化を計画的に発生させ買い替え需要を喚起させようとします。
これを、計画的陳腐化といいます。

計画的に陳腐化させて買い替え需要を喚起するためには、プロダクトに対して上記三つの計画的陳腐化のどれかを用いて陳腐化させねばなりません。
そうしないと、売上が上がらなくなります。

計画的陳腐化には三つあります。
物理的陳腐化と機能的陳腐化と心理的陳腐化です。

計画的陳腐化で需要喚起。物理的陳腐化・機能的陳腐化・心理的陳腐化 より

 

モードというのは、計画的陳腐化の中でも心理的陳腐化を最大限に用いたビジネス手法。
定期的に新しいデザインを提案し、以前のデザインを古くてダサくてみっともないようにしていく。
手持ちの服は全然消耗していないのに、新しいデザイン的魅力やトレンドによって次の服を買うよう強迫される。
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