小布施酒造と一桁酵母

長野県小布施町の小布施酒造。
ここは、むしろワイン好きの間で評価の高い小布施ワイナリーとしての方が有名ですが。ワイン作りを休む冬季に、ひっそりと清酒を造っています。
元々は清酒蔵だったそうですし。

ワイン屋が日本酒なんて、という向きもあるようですが、ところがどうして、最近では百貨店でも扱われたりするくらい、良く出来た酒です。
どれも酸が高く、切れよく、華やいだ香りは控えめの傾向があります。
ワインボトルに詰められていて、ラベルもワインラベルをベースにしていてオシャレなので、ビジュアル的にも素敵な日本酒です。
私もここの清酒を4年前に知ってから、毎年追い続けています。
そうやってずっと追い続けている酒はここと、水尾しかありません。
オススメ→水尾 特別純米 金紋錦仕込み 1800ml

 

さて、私が知った頃から「日本酒にもテロワールの概念を」と自家栽培した美山錦という酒米で清酒を醸造していました。
自家栽培米と県内で流通している美山錦と、そしてそれぞれに吟醸酵母と7号酵母の酒がありました。
そして3年程前から、この蔵の懐古醸造が始まりました。
生モト造りと呼ばれる、古い造りでの醸造も開始したのです。
そして通常3割以上は削るという精米でも、1割に抑えた低精米での造りも始めました。
昔は精米技術も未熟だった、ということでしょう。
「いいお米で、昔の美味しい酒を造ろう」という考えのようです。


さて、ここで酵母の話に移ります。
酒造りには酒作りには酵母が欠かせません。
日本酒のフレーバーの肝は酵母にあると言っても過言ではなく、今も新しい酵母が開発されていますし、求める酒質に対し幾種類もの酵母が使い分けられています。
昔から優良だとされる酵母は分離採取され、日本醸造協会から広く頒布されてきました。
兵庫は灘の櫻正宗から採取されたのをきょうかい1号酵母とし、現在はナンバリングでは18号酵母まであります。
その他にナンバリングされてない花酵母や各県のローカル酵母もあります。菊正宗や松竹梅は自社酵母があるようです。

現在世間にある酒は、秋田の新政で採取され、昭和10年に発売された6号酵母以降の酵母です。
ただ、6号酵母は採取元の新政では主力で使われていますが、全国的に見てほんの数える程の蔵でしか使われていません。
8号酵母は永らく絶えていましたが、近年3蔵で復活醸造されています。
ですので、実質7号と、飛んで9号酵母以降が現在の酒造りに用いられてます。
(数字が増える程華やかな香りが出る感じ)
それ以前の1-5号酵母は味も知られていないし、販売されなくなった経緯も不明で、酒造りからは絶滅してしまいました。
もう、それらの酵母のお酒は飲めない
 

……ように思われましたが、なんと日本醸造協会に、ライブラリとして保存されていました。

ここに小布施酒造が目をつけました。

一昨年から、天然酵母(自然に酵母が着くのを待つ)での醸造もやっている蔵です。
天然酵母での生モトと、6号酵母の間には何があるのか?と考えたようです。
単なるライブラリであり、醸造用での提供を渋る日本醸造協会に、熱意と経緯を伝え、なんとかきょうかい1-5号を入手できた。
そうして入手した1-5号酵母に、6,7,9号酵母、そして蔵付きの天然酵母での酒を造り、これを来年春に発売するとのこと。(8号が抜けてるのが残念)
そしてそれは限定200セット。即座に申し込みました。
これは、清酒の歴史的にも貴重です。酒屋にも、ましてや飲食店にも出回らないでしょう。

 

これを読んで予約した方がいいと言いたいとこですが、注文から12日間も経ってようやく受注受諾の連絡が来た程なので、おそらく完売でしょう。

 

残念ながら小布施酒造の日本酒はネットで買えないようです。しかしワインは買えます。

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年末の旅行で見付けた、最高に美味しい普通酒です。
IKEAの価格で無印良品の品質ともいうべき高品質。


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