久々の東コレ見学感想2012秋

2年ぶりに、東京コレクションを見に行った。

投稿の間隔から、かなりファッション離れを起こしていることはおわかりだと思う。

いくつも理由はあるが「ファッションが価値を持つコミュニティに生きていない」ことが一番の理由だと思う。

学生時代はみんな立場が同等であり、異性にモテることに大きな動機があり、そのために見た目のカッコよさと面白さが価値を持っている。カッコよさを大きく補強するのがファッションだ。

そして自分の望む友人コミュニティを選択できる。ファッションはそのエントリーチケットだ。

ところが社会人になると、仕事での人付き合いが主になり、そこでは冒険的な服装は価値を失う。むしろ評価を貶めかねない。

また、人の評価指標が、言動と業務能力へ大きく変化する。特に「仕事できる」「仕事できない」での人物評価は恐ろしい程強力だ。

ファッションは保守的を求められ、その上で人物評価のゲートではあるけれど、しかしそれだけでしか無くなる。

日本の一般社会人には服飾文化が存在しないからだ。

ファッションを評価できる人間が役職者にいないのだから、それは価値を持たなくなる。

所長、支店長、部長らが吊しの安物スーツを着て、ポリ生地のシャツを着て、履き捨ての合皮靴で仕事しているのだから、これで”グローバル”だとか言い出したら、笑い話に……してはいけない。

そんなわけで、ファッションへの主体的な興味は失せてしまっている。

で、枕が長くなったが、東京コレクションの話。

見たのはato(Fashion Press)とMIKIO SAKABE(Fashion Press)

まあ今はこうやってコレクション直後に写真が見られるので、どうでした?といっても「写真で見る通りですよ」となる。

ライヴでショーを見る価値はそれほど無い。

ざっと感想を言えば、atoはピシピシした服を作っていたのに、随分リラックスした服を出すようになったなと。
これらのカットソーなんかは切り替えでやっているんだけど、洗濯して斜行しないのかな?なんて思ったりした。

あと、スーツがしっかり仕立てられてないと感じたかな。なんかモデルの体に合ってない。

 

MIKIO SAKABEは、バンドじゃないもん!というツインドラムアイドルのライヴとコラボレーション。バンドの動画群はこちら

彼女らの下手な歌と演奏が鳴る中、少女趣味服のディテールにまみれた服を着たナードな男性モデルが、漫画雑誌(少女マンガだったらしい)を手に持ち、ステージで読む。

日本のポップカルチャーだとかオタク文化だとか言えば聞こえはいいが、それらを食い物にして当ててやろうという意図が見える。

見た直後にTwitterでこう書いた。

「スポンテニアス(内発的)なものでなくて、オタクカルチャーのわかりやすい上澄みをさらに蒸留させたようにやってる。平たくいえばあざといし、その真髄を持っている日本人には本質的に受けないと思う。表層の他人事のウケで終わる。」

坂部 三樹郎はずっとこういう日本のオタクをネタにコレクションを作っているが、彼自身にこういうオタク趣味や経歴があるとは思えない。

つまり外からオタクを観察し「これが日本特有のオタクの特徴」として掬いあげて、ネタにしている

オタクのエッジィな部分を取り出しているから、ものすごくわかりやすく、外国人から見たら「wow!」となるかもしれないが、じゃあそれでこの服をバイイングするかといえばしないだろう。見世物である。

せめて、海外でやる方が効果的だと思う。

なぜならオタクを横目に成長してきた我々は「そうそう、こんなだよ」と感じる。しかし、他人事で彼岸の事象でしかない。或いはオタク当事者からしたら馬鹿にされていると感じるかもしれない。日本人には完全に表層でしか捉えられないからだ。(そもそも薄っぺらいと思うし)

 

そして東京コレクションについて思ったこと。

世界5大コレクションと呼び、パリ、ミラノ、NY、ロンドン、東京と並べてきた。

しかし東京はこれらに並ぶであろうか?いや、並ばないだろう。

東京コレクションは日本で完結してしまっている。日本人が日本人のための服を作って、日本人が買い付けている。(アジアからとりあえず…的に日本で始めるデザイナーはいる)

世界から人が見に来ないのは、スケジュールや会場がバラバラで、集中的に効率良く見て回れないからだと言われた。

そしてもう何年も前からJFWとして組織され、きっちりやるようになっている。

だが、今回も外国人のプレスやフォトグラファーはほとんどいなかった。(それでいてモデルは欧米人ばかりだ)

少数は見たが、きっと「招聘されたから」とか「東京でファッションのお祭りがあるから」と物見遊山で来ているのだろう。

買い付けてやろう、才能を見出さそう、と前のめりで来ている人間が果たしているのか?

どう見ても東京コレクションは養成所である。評価もビジネスも。

デザイナーも日本でしばらく頑張って力をつけては、皆パリへ渡る。

力をつけたデザイナーがみんな抜けていくから、決して充実しない。

 

じゃあどうすればいいのか?それを考えるのは私のやることではないが、一つのアイデアは「出口を確保してコレクションを開く」しかないのではないか。

海外のバイヤーや海外のメディア枠を確保して、コレクションを行う。どうやって確保するかは知らない。

ただ、継続する為には、相当努力しなきゃいけないだろうな。主催者もデザイナーも。それができたら一気にレベルが上がる気もする。

 

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今年買って大満足したものです。エアウィーヴの類似品ですが、遥かに安く、機能は申し分ありません。

満足度が高すぎて、枕まで買ってしまいました。

中芯だけ買ってもいいかも知れません。


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