アンリアルなファッション~ANREALAGE~

東京オペラシティ アートギャラリーでの「感じる服 考える服」を見てきました。
内容的には、こちらを見れば充分かなと思います。弐代目・青い日記帳「感じる服 考える服」
服の展示数はプアです。SASQUATCH fabrixは服じゃないし。

色々疑問はあったのですが、サブタイトルが東京ファッションの現在形とあり、なるほどねと思いました。
東京では過去にもこういうデザインやっているとこあったし。

さて、中でも特に気になったのはANREALAGE。
real、unreal、ageをミックスしたネーミングだそうですが、実物という意味ではリアルですが、ファッションとしてはアンリアルだなと思いました。

彼の作品は”服”ではありますが、残念ながら”ファッション”には成り得ていないなと思います。
ファッションは人が生活するときに着るものです。
人が着て、動いたときに完成するものです。

ANREALAGEは、それが成り立っていない。
2009年春夏の「◯△□」は、球体、三角錐、立方体に合わせた時にわかる服。
その後「凹凸」のコレクションでも、デコボコした型に嵌めた時にわかる服。

過去のコレクションを見ると、そのような或る規定の型に嵌めたときに完成する服ばかりを作っています。


彼がやっているのは、考えた事を実際の布地でやってみたら、こうなりましたって発表です。
音楽で喩えれば、グラフィカルにユニークな楽譜を実際演奏してみたとか、そういうレベルの服。
こういう面白い楽譜を弾いたら、音楽としてはどうかわかりませんけど、こういう音が出ましたよっていうような。

これが以下のように音楽としてしっかり聴ける程完成されたされたものであれば、何も問題ありませんでした。
例えばこの音楽は、ピアノロールが画像としても成立していますし、音楽としても秀逸なものです。
【MIDI Animation】 Nico Nico Aquarium

しかし彼の服は、リアルなファッションとして完成してはいませんでした。

ANREALAGEの森永さんという方はコンセプターとしては優れたものを持っているでしょう。
しかしファッションデザイナーとしてはどうでしょうか?
装苑賞に応募したとして、ポートフォリオは通過するでしょうが、実製作でチーンとなるような服に思えます。

かつてオズワルドボーテングは
「私はビスポークテーラーだ。誰にでも似合うスーツを仕立てる。例えば、このテーブルに似合うスーツでさえね」
と冗談で語った事がありますが、ボーテングにはそれだけの確たる技量があります。
絵画でいうなら、正確なデッサンや描画技術を持った画家が、崩して抽象画に取り組むようなもの。

森永さんも◯△□に合った服を作りました。
会場受付で配布された資料には
「神は細部に宿る」が信念にマニアックなクラフトワークを探求
と書いてあります。
マイクロパッチワークの服なんかは確かにそうかも知れませんが。他所の服からパターンを抜いて服を作る人がそういう事を言っていいのか疑問です。

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暖かそうです。誰か買って感想を教えて下さい。


Comments

“アンリアルなファッション~ANREALAGE~” への1件のコメント

  1. はじめまして。
    ファッションデザインを少しだけ齧りましたが、ファッションやらモードやらに漂う虚しさみたいなものも、中にいる時には中々気づかないんですよね。
    外から見て気づいた事が沢山ありました。おかしくて奥深い世界です。

    人が着ることが関わらないファッションはファッションでは無い、という信念があるので、まったく同感の記事でした。

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