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ファッションブランドにおける「定番」の使い方について雑感(2)

さて、前回の投稿で話題に挙げた某Aさんですが、
他にも悲しい問題があるのです。

先述した通り、このブランドはクリエイション面で極めて高いレベルのアイテムを発表していらっしゃいまして、
繰り出されるアイテムはどれもエッジーなものばかりです。
シルエット的にもエッジーなものが多いのですが、
毎シーズンのように発表されるオリジナルのプリント柄も極めてエッジーで超カッコいいです。
そして、その超カッコいいプリント柄を、
ワンピースやTシャツの全面にフルパワーでプリントした全力投球のアイテムを発表しています。

これらのアイテムをですね。

例えばラテン系の人が着たらさぞかし格好良いことでしょう。
Aさんの服を着ながらクラブでガンガン踊りまくるラテン系の人が目に浮かんできますね。

もしくは、イギリス人でも良いでしょう。
何といってもマックイーンやヴィヴィアンのお膝下ですからね。エッジーな商品なんてお手の物ですよ。
写真映えする服それを着る人
もうこうなるとスナップ写真家が黙っていません
実際、某Aさんがおっしゃるに、イギリスのショップから注文が入ったようです。

ところが、よくよく聞いてみると、日本のバイヤーからは服については注文が入りにくいそうです。
それはそうなってしまうでしょうねぇ。
残念ながら、ここは日本です
見に来ている人も、買付に来ている人も、売ろうと思っている消費者も、基本的に全てJapaneseです。
彫りが浅くて胴長短足の純日本人には、某Aさんの服は主張が強すぎます

さて、ここでデザイナーさん自身が、アグレッシブな性格だったらどうでしょう。
軽い気持ちで見に来たバイヤーさんに、ああだこうだあることないこと捲し立てて
某通販番組の社長よろしく小ロットでも複数の商品をフルラインアップで売るなりして数をこなしたり、
あるいは他ブランドの取材ついでにフラッと寄ったプレスさんに、
ブランドに関する資料やリリース等のほか、CDやらDVDやらを大量に渡し
ついでにブランドオリジナルのノベルティでもお土産に差し上げたりなどして、
twitterやFacebookに「○○さんに来ていただきました!」と書き、記事公開に無言の圧力でも掛けてやったりすれば、
地道な努力が実を結んで、ショップとメディア両面から徐々に知名度が上がり、
それに呼応して売り上げが上がるということも、全くあり得ない話ではありません。

ところが、よくよく聞いてみると、某Aさん自身は押しが弱いのだそうです。
いや、聞かなくてもそんなことはとっくに知っていたのですが、敢えて聞いてみてもやはり思っていた通りの答えが返ってきます。
では、押しが弱い自分の代わりにガンガン行ってくれる従業員等はいないのかと聞くと、それもいないそうです。
もうここまで聞くと、「うぐぅ」とか「はがぁ」とかしか出てきません

このままやっていると日本では売れないままなので、外国に行った方が良いのかもしれないとは思いますし、
Aさんもそのつもりのようですが、
果たして、このままの状態で外国に突撃していったとして、
高いレベルのクリエイションを維持しているブランドが多数存在する海外モード界の荒波を無事に泳ぎ切ることができるのでしょうか。
クリエイティビティの高さで比較したところで負けはしないと思いますが、
膨大な量のブランドが参加している海外モード界において、
押しの弱いブランドが、そもそも自らのブランドの存在に効率良く気付いてもらえるのでしょうか。

こうなってくると、もはや売り方を変えてやった方が手っ取り早いように思えてきますね。
そもそも、海外でやっていく場合であろうが日本でやっていく場合であろうが、
全力投球オンリーでやるよりも、
適度に力を抜いた投球も交えた緩急で勝負するタイプの投手を目指した方が、
確実に勝率は上がっていくと思うわけですね。
いや、目指すのは投手ではありませんが。

それでは、ファッションブランドにおいて適度に力を抜いた投球というのは一体何なのか
という風になるわけですが、これまた長くなってしまったので、
続きは次回へ

ファッションブランドにおける「定番」の使い方について雑感(1)
ファッションブランドにおける「定番」の使い方について雑感(2)
ファッションブランドにおける「定番」の使い方について雑感(3)
ファッションブランドにおける「定番」の使い方について雑感(4)

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