目利き


道を通りながら、前を通過した飲食店から美味しそうな雰囲気を感じることがある。
気になるので検索して調べると、良店であろうことがかなりの割合となってきた。
その、店から感じる美味しそうな雰囲気を、端的に「オーラ」と表現しているのだが、先日「店のオーラってなんですか?」と質問された。

ラーメン王石神秀幸氏はラーメン屋を見て美味しいかどうかわかるようになっているという。
ある食べ歩き人は「美味しい店の前に来るとメガネが曇る」という表現を使う。
尊敬する中学からの友人も、店の前や店に入った段階で「この店、やるな」とか「いいにおい(ムード)があるね」という。

積み重ねてきた経験と観察眼によって、美味しい店を察知できるようになっているのであるが、それらは複雑で複合的なものであって、明文化できるものではない。
挙げていくならば、単純に漂ってくる匂いだったり、店構えへの配慮だったり、客が美味しく食べている雰囲気だったり。

ファッションで言えば、パッと見て服の仕立ての良さを感じられるかどうか、みたいなところがある。
わからない人にはまるでわからないものだ。
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居酒屋ないし和食屋における酒と料理の関係について


最初に断っておきたいが、当記事での飲食店批評は、列挙する店含め、既存の店を貶める意図は皆無である。

近年、都内では日本酒揃えの良いお店が大人気だ。
料理よりも酒に重心を置いたスタイルは、古来日本では「酒場」といったはずだ。(欧米ならパブ、あるいはバルか)
しかし、酩酊を介した交流場であり、美酒利き処であったわけではないだろう。
美酒普及に伴う新しい業態かも知れない。しかし私はそのあり方に納得がいっていない。
ほとんどの店が、料理が弱い。そして酒に店からの提案が無く「好きなのを好きなように飲んで下さい」である。
欧米の食事ではどうだろうか。料理に合うワインを提案するではないか。
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小布施酒造と一桁酵母


長野県小布施町の小布施酒造。
ここは、むしろワイン好きの間で評価の高い小布施ワイナリーとしての方が有名ですが。ワイン作りを休む冬季に、ひっそりと清酒を造っています。
元々は清酒蔵だったそうですし。

ワイン屋が日本酒なんて、という向きもあるようですが、ところがどうして、最近では百貨店でも扱われたりするくらい、良く出来た酒です。
どれも酸が高く、切れよく、華やいだ香りは控えめの傾向があります。
ワインボトルに詰められていて、ラベルもワインラベルをベースにしていてオシャレなので、ビジュアル的にも素敵な日本酒です。
私もここの清酒を4年前に知ってから、毎年追い続けています。
そうやってずっと追い続けている酒はここと、水尾しかありません。
オススメ→水尾 特別純米 金紋錦仕込み 1800ml

 

さて、私が知った頃から「日本酒にもテロワールの概念を」と自家栽培した美山錦という酒米で清酒を醸造していました。
自家栽培米と県内で流通している美山錦と、そしてそれぞれに吟醸酵母と7号酵母の酒がありました。
そして3年程前から、この蔵の懐古醸造が始まりました。
生モト造りと呼ばれる、古い造りでの醸造も開始したのです。
そして通常3割以上は削るという精米でも、1割に抑えた低精米での造りも始めました。
昔は精米技術も未熟だった、ということでしょう。
「いいお米で、昔の美味しい酒を造ろう」という考えのようです。

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硬派純米酒と華やかカプロン酸エチル酒と。


ここ3年日本酒にハマっているのはご存知の通りです。
本日、池袋東武地下で行われている試飲会に行ってきました。
「【日本酒】池袋東武で5月26日(木)から6月9日(水)まで、「全量純米蔵を目指す会」11蔵の試飲販売を実施中。 阿波山田錦の60%精米という統一規格の第一段11商品が、2年間の熟成を経て再来。 各蔵の個性が堪能できます。」
全量純米蔵を目指す会

昇龍蓬莱、秋鹿、るみ子の酒と試飲していって、ふと気付いた。
冷蔵されている酒を試飲しているけれど、全部味が”硬い”。
「あの。この中で冷(ひや)で美味しい酒ってどれですか?」
「んー、無い、ですね」
「ですよね!?みんな温めてうまくなる酒ばかりですよね!?
じゃあ、なんで冷蔵した酒を試飲で出してるんですかwww」
「いや、冷でもそれなりに美味しく飲めると思いますよ」
これは方便で、おそらく百貨店からの指示や、客受け等色々な理由があったのだろう。

それから色々話をしたのだが、最近の白ワインのような香がプンプンする酒でなく、正当な日本酒を作りたいという。
「(醸し人)九平次とか、ああいう酒はねぇ」

醸し人九平次 純米吟醸 山田錦 720ml

醸し人九平次 純米吟醸 山田錦 720ml
価格:1,764円(税込、送料別)

と、白ワイン系最右翼のカプロン酸エチルぷんぷん酒を挙げた。
そしてこの会は、九平次とは真逆にある、純米硬派の神亀が主体であり、そういう酒を目指しているのだという。

神亀 純米酒 720ml

神亀 純米酒 720ml
価格:1,648円(税込、送料別)

例えるなら、九平次はヒットチャートに入るような、キャッチーなポップス。
神亀は、実力派のブルーズ。

私のスタンスは、ポップスから入って、ブルーズも理解できる、というところ。
それぞれに良さは理解しているが、好みとしてはポップス系に少し寄っている。
しかし、この店員相手にカプロン酸エチル(ポップス)話は禁句である。
純米(ブルーズ)の深い話に付き合って、気持ちの良い接客をしてもらった。

さて、ここから(このブログ読者のために?)むりやりファッションの話に持っていくが、神亀というのは、いわば着心地を追求した服のような存在でもある。
日本で最初に全量純米酒の製造を始めた酒蔵だ。
その硬派な味とスタンスに憧れ、「全量純米蔵を目指す会」のようにいくつかの硬派な酒蔵は純米酒へと向かった。

毎年、新酒鑑評会というコンテストが行われているが、これは美味しさというより、華やかさを競うドレスアップコンテストである。
飲んで美味いというより、かぐわしさを競うようなものだ。
鑑定する人たちは、出品酒を”飲まない”。
口に含んで吐いてオシマイである。
着て気持ちいい服ではなく、見て美しい服を選ぶのと似ている。

どっちがいいか?どっちもいいに決まっている。
それは各々が選択すること。どっちかに振り切る必要もない。

しかし気になったのは、オリジナルを生み出すのでなく、どっちかを目指す酒蔵である。
獺祭を目指したという、山口の「貴」
神亀を目指した、全量純米蔵を目指す会の酒蔵。

今日話した諏訪泉の蔵人も「やっぱり神亀さんは抜群にうまいです」と語っていた。
亜流ではなく、オリジンであって欲しいとは思う。

弦巻茶屋・庭付き一軒家で和とモロッコの同居@世田谷区弦巻


田園都市線の桜新町からしばらく歩いたところ。
住宅街の路地にあり、この店が目的でなければまず見付からないだろう。
とある住宅の門扉のところに、このような看板がある。

弦巻茶屋HP

緑の多い庭を抜けて家屋に入ると、日本家屋の中天井をぶち抜き開放的にして、そこにモロッコ風のインテリアを配している。
不思議な雰囲気である。

この日頼んだアールグレイ550円は、ポットに入って、2杯弱飲める。
この日のケーキである抹茶ロールケーキは、生地にオレンジリキュールのようなフレーバーが強く感じ、抹茶クリームよりずっと主張していた。

音楽のセンスはイマイチ。妙なダンサブルな音楽が掛かっていて邪魔。
なので、天気のいい日は店内より庭のテーブルで語らうのがいいと思う。

奥の席で食べていたパエリヤは2人前3800円だったか、少し高いが、美味しそうだった。

しかし、料理うんぬんより、この和とモロッコの雰囲気を味わう店だ。
デートで行くにはばっちり。

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鹿港・シンプルでありながらベストクオリティの中華まん@世田谷区上町


鹿港(ルーガン)・中華まんHP
世田谷道路沿いにあり、最寄り駅は世田谷線の上町駅という、電車では非常にアクセスしにくい駅。
渋谷からバスがもっとも便利かな?

生地に定評があり、生地のみのまん頭も人気らしいが、ここは肉まん140円を注文。
渡されてすぐに口にしてみたが、これが旨いのなんの!!

コンビニの生地は気泡が入ったフカフカだが、ここのはもっともっときめ細かいプニプニの生地。
こりゃ、まん頭(生地のみ)でも商売になるわけだ。

豚肉とネギしか入っていない筈の具なのに、恐ろしい程の旨味と肉汁。(味付けは塩胡椒のみ)
豚肉は小さく刻んであり、食感もいい。
食べ方に気をつけないと肉汁がこぼれます。

家のそばにあって欲しいが、あったら頻繁に買いそうで怖い店。

別の日に訪問したところ、出来立てではなくしばらく置いてあるぬるい肉まんが出てきました。
生地感も劣化し、肉汁も感じませんでした。
平日で回転が悪いからでしょうか。残念です。

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酔蕎庵 楽食・塩で食べる十割蕎麦@厚木


相変わらずファッション記事は月一ですが、食べログを始めようと思います。
こちらは頻繁にアップしていきますので。

酔蕎庵 楽食 (すいきょうあん らくた)HP
神奈川県厚木市とはいえ、田舎じみた場所にある蕎麦屋です。
こぢんまりしたショッピングセンターの一角にあります。

狭いながら洒落た内装で、ジャズが流れています。
(蕎麦屋でジャズ流してどうするんでしょうか?)

座ったら出てくる蕎麦茶がめっちゃウマイです。

ここんちは、つなぎを使わない十割蕎麦です。
店内に色々書いてあるのですが、曰く
「十割蕎麦は15秒で茹で上がる。二八蕎麦だと45秒かかる。これは蕎麦が茹で過ぎて2割の小麦粉のコシになる」
とか、そうして茹で過ぎると蕎麦の成分が湯に流れ出てしまうとか。

ランチメニューでミニつくね丼とせいろのセット1150円を頼みました。

店主が盆を置く際に「塩で食べてください」と一言添えてきます。
ピンク色の塩、おそらくヒマラヤの岩塩ですが(これも最近トレンディですね)、それで食べてみましたが……
ツユで食べ直してみると、わざわざ塩で食べることもないなと思いました。
いくら麺がうまいからといえ、米やうどん他炭水化物モノを塩だけで食べはしませんものね。

ツユは少なめにしか入っていないので、ちょっとだけ浸す濃いツユかと思いましたが、そうではありませんでした。
全部浸しても普通に食べられます。
甘味が少なくて好きです。

蕎麦の香は強いものではありませんが、美味しいです。
しかし蕎麦湯はむっちゃ美味しかった!!

つくね丼は、焦がし気味に焼いたネギが美味しく、つくね自体はかなり細かく挽いたもので、そこそこ美味しかったです。

せいろは2枚目を頼むと+260円だそうなんで、せいろ2枚でもいいかも知れませんね。

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