こんにちは。皆さん、今日も服は好きですか?
あまり知られていないと思いますが、かくいう筆者も、かなり前から結構な服好きなのであります。
どちらかというと、服をたくさん買いたい方の服好きではなく、服をたくさん観たい方の服好きだ、とのことです。
そこで、今日はそんな自称服好きたる筆者が、
普段どのようなことを考えて服を観ているのか、ということについてお伝えしたいと思います。
さて、話題は変わりますが、島精機さんが開発された著名な技術にホールガーメントというものがあります。
この技術には色々と特長があるわけですが、着心地やデザイン面での特長の1つは無縫製であるという点です。
そして、この技術を用いたニットウェアを以前から展開されているブランドさんがあるのですが、
そちらのプレスさんが、以前、
「この商品は縫い目が無いんです、みたいなことを言っても、
お客様に『ふ~ん』みたいな反応をされるので、最近はあまり細かい説明をしないようになりました」
といったようなことを、苦笑交じりに漏らしていらっしゃいました。
確かに、普通の消費者や、それらをターゲットにするバイヤーさんにとっては、
無縫製であるという点はそれほど重要なことではなくて、
そんなことよりも、特に女性の消費者としては見た目が気に入ったかどうか、バイヤーとしては売りやすいかどうか、
といったことの方がよほど重要なわけです。
まして、例えばサイドシームが脇に当たることによる不快感を軽減するためには、
何も無縫製である必要はなくて、
一方の身頃のパターンを余分に取って、シームを前か後ろのいずれかに少しズラせば良いわけですし、
さらにいえば、身頃や袖等の各パーツをリンキングしてしまえば、
素人目にはもはや無縫製であることと見た目にもほとんど変わりがなくなってくるわけです。
しかし、作り手の側も服が好きであるからこそ、
敢えて無縫製ニットという面倒な技術に挑戦し、
着心地やデザイン面での品質の向上のためにある意味で報われない努力をしているわけで、
そういった影の努力にこそ、服好きが惹かれるだけの価値が見い出せるわけです。
他にも、例えば365万色をプリントできるプリンターを用いて、
生地にプリント柄を施してみたブランドさんもいらっしゃいます。
実際には生地にプリントすると365万色を完全に表現するのは無理だったそうですが、
それでも従来のプリント技術では実現できなかった細やかなプリント柄を表現できたそうです。
このケースでも、結局は365万色のプリント技術はフルパワーで活躍できなかったわけですが、
服好きである作り手が色々と試行錯誤してとりあえずやってみた、
といった影の努力に、服好きは心惹かれてしまうわけです。
もしかしたら、今後のテキスタイル技術の進歩によって、
365万色を完全に表現できるようになるかもしれない、
そうなった時のプリント柄は一体どんな風に見えるのだろう、といったことを想像しだすと、
服好きとしては楽しくて堪らないわけです。
以上のような例はほんの一部分であって、
逐一説明しないと伝わらずに見過ごされてしまう、
報われない努力というものが、服好きたる作り手が為す服作りにおいては多々あるわけです。
そういった普通の消費者がそれほど気に留めない、影の努力にこそ価値を見出だすというのが、
服好きたる筆者のささやかな美学であるわけです。
そして、ついでに言いますと、
そういった報われない影の努力に光を当てるのが、
服好きたる筆者が運営するファショコン通信の美学なわけです。
これからも、そういった美学を忘れずに服好きであり続けたいな、と思う次第であります。
以上、自称服好きたる筆者が普段どのようなことを考えて服を観ているのか、
ということについてお伝えしました。
スタジオにお返しします。