最初に断っておきたいが、当記事での飲食店批評は、列挙する店含め、既存の店を貶める意図は皆無である。
近年、都内では日本酒揃えの良いお店が大人気だ。
料理よりも酒に重心を置いたスタイルは、古来日本では「酒場」といったはずだ。(欧米ならパブ、あるいはバルか)
しかし、酩酊を介した交流場であり、美酒利き処であったわけではないだろう。
美酒普及に伴う新しい業態かも知れない。しかし私はそのあり方に納得がいっていない。
ほとんどの店が、料理が弱い。そして酒に店からの提案が無く「好きなのを好きなように飲んで下さい」である。
欧米の食事ではどうだろうか。料理に合うワインを提案するではないか。
知る限り最多の酒揃えは、四谷三丁目の酒徒庵(食べログリンク)。常時500以上の酒を揃えてある。700種類との話も。
酒徒庵は「日本酒と牡蠣の店」とある。
こちらの店長はきちんと酒をわかっていて、頼めば料理への相性も教えてくれるし、リクエストした味の酒も出してくる。
しかし、一人で接客していて人手が足りないのもあろう。
積極的な提案はせず、結果、あれこれ利き酒会場になる。
そして料理は手の込んだ料理では無く、酒のツマミがほとんど。
他にも、5千円や6千円で日本酒が20~30種類飲み放題でコース料理が出る店も人気。
池尻大橋のつくしのこ(食べログリンク)は、二ヶ月先まで予約できないらしい。
こういう定額飲み放題店の酒の多くは、一升2500円前後の純米吟醸クラスに集中する。
これらは”酒だけで美味い酒”だ。
そして客が褒めるのは「銘酒を多数利き酒し放題」の点であって、料理と酒の相性の話は無い。
感想は「酒に合う~」ばかりである。酒主体。
料理は、家庭料理の延長のものか、あるいは鮮魚や野菜等素材頼りで、調理の技術が見える料理のすごい店はまずない。
2店挙げたその理由は、私がこのように感じるにも関わらず、恐るべき高評価が付いているからだ。
酒徒庵の酒や、つくしのこのCPは凄いと思うが、それらに引っ張られて、料理の点も大きく加点バイアスがかかっているように思える。
どうやら日本酒は、数多く利き酒できることに価値を見出されているらしい。
希少だったり有名な銘柄を飲むことに価値があるらしい。
これは客側の問題であり、それに答えた店がそれらであった。
一方、店側の問題。
料理と酒のマッチングはいずこに?
それは客任せで良いのか?
常々あちこちで言っているのだが、酒が美味いのは酒造の手柄である。
同じものが酒屋でずっと安く買える。
メシ屋が酒自慢してどうする?
大事なことなので、繰り返す。
酒が美味いのは酒造の手柄である。
店側が酒で誇って良いのは、その酒を客が自宅で飲むより美味しく提供できる場合だろう。
居酒屋でなく料理自慢の店ではどうか。
割烹や料亭。
こちらでは大吟醸クラスの、格も値段も高い日本酒と、どうでもいい普通酒の二極化が起こる。
一般に大吟醸は味の線が細くて、香り豊かな酒が多く、食中酒に相応しいものではない。
店側は格を揃えたのだろう。
料理の香りと酒の吟醸香のバランスを考えていない。
酒の味の線が細ければ、強い料理には負けてしまう。
普通酒があるのは、安いアルコールドリンクとして置いてあるだけである。
飲んでみたいワインがあって、ビストロに行くだろうか?レストランに行くだろうか?
美味いメシが食いたくて行き、それに合うワインを選ぶ。
同じように、まず美味いメシを出して、それと合う酒を出すようになって欲しいと思う。
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