某ショーを見ての感想

ファッションウィークは終わったものの、まだ東京コレクションが行われている。

毎度毎度、正規ではない色々なツテで入場させてもらっているのだけど(友里征耶さんの覆面グルメみたいだな)、今期二つのショーを見させていただいた。

そのうち今回見たのは、某ボクサー出身の方がデザインしておられる、人気メンズブランド。

ショーを見ながら思ったのは
「やっちまった」
という残念感だった。


名前は出さないけど、露骨にいうとこのブランド

ディオールオムのタイトさに、トムブラウンばりの寸足らずパンツ。
もう、寸足らずパンツを出した時点でNGでした。
そりゃMDブランドの仕事でしょう?
ちっともクリエイトなんてしていないじゃないかと思ってしまった。

調べたところによると、
ショップで服の販売のアルバイトを経験、古着の買い付け販売を経験。
イギリスファッションの影響を受け、独学で英国テーラードを学び、服作りを始めた。
テーラードジャケットの持つ優雅さ、美しさを非常に大切にしている。着たときのシルエットを大事にしており、ミリ単位までこだわりをもってデザインしているという。
(fashion press参照

ちゃんと服の勉強していないのね。
ここから、私の独断。

多分この人、自分の好きなデザインが、今の時代にマッチしただけなんじゃないだろうか。
自分の内部から生み出された特色あるデザインではなくて、タイトな服が好きで「キタ!」って乗った感じ。

独自のスタンスといったって、タイトなテーラードしかベースにないから、デザインのトレンドが変わったら途端についていけなくなるだろうし、同じような服しか作っていけない気がする。
それはそれで、そこを求めるファンにはいいんだろうけどさ。

デザイナーには自分で解釈した世界観が欲しいし、トレンドを超越した強さも欲しい。
と同時に「トレンドも見えてるぜ」という余裕も必要。

そういう面では残念ながら…という感が強く残った。

ちなみに、
「着たときのシルエットを大事にしており、ミリ単位までこだわりをもってデザインしているという」
というのは、なんて浅はかなアピールポイントなんでしょうか。

彼が発言したのか、誰かが拡大解釈したのかわかりませんが(或いは発言していないのかも知れない)、着たときのシルエットを大事にしないでどうするの?
それに加え、動いたときの生地のドレープも大事だよね。
体の可動性も大事だよね。

洋服の仕様書はミリスケールで発注するし、そこで雰囲気が変わることだなんて、当然のこと。
裾あげだって、ミリ単位で調整する人いるでしょう?

ものを作る人なら、そこまでやった上で、さらなるニュアンスの追求をしてしかるべき。

他でも良く見かける「ミリ単位でこだわっています」という言葉。
「最低限のことはやってますよ」というアピールにしか聞こえません。
もし私が技術者であったなら、緯糸横糸一本単位のスケールでこだわると思うよ。

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口に含んだ瞬間に、フルーツのような芳香が飛び込んできました。


Comments

“某ショーを見ての感想” への7件のフィードバック

  1. かいぜのアバター
    かいぜ

    デザイナーは元々自分が好きなことと時代が合ってないとなかなか認められないものなのでしょうし、
    運とタイミングってのも重要だとは思います。
    けど、今の時代、特に日本なんだから、どのような情報が出回ってて、
    コレを出したらどう思われるかという
    客観的な視点っていうのも必要だとは思いますね。

    ミリ単位の調整って確かに
    よく聞きますね。
    縫う人がミリ単位で縫い損じたら
    意味無いかもだけど。

    ともかく雰囲気を出す調整をしてる
    という意味でしょうが、
    肝心なことは着てみないと
    わからないものですね。

  2. なんだか、当たり前のことをやってますというふうにしか読み取れなかった。

    まぁ、ファッションはパクったりパクられたりだということは、以前、川久保さんも言ってた気がするけど。

  3. 個人的な印象としては最初のコレクションのボクシングネタでもうすでに手札使い切った感がしてならないです。
    パンツの丈が短くなったのは前回のコレクションからでしたが、今回もそうだったとなると先行き不安です。

    あと、fashion pressの人にはatoを連想して欲しくなかったです。

  4. >かいぜ
    プリーツドレスがイッセイのものであり、袖のカットオフコートがラフシモンズのものであるように、あの丈のパンツはまさにトムブラウンの専売特許であるべきなんですね。
    それをやっちゃ、MDブランドでしょう…

    >masato
    出典がわからないので、ぜひ本人のインタビューを読んでみたいものです。

    >cos
    前回からあの丈だったんですか。
    ずっとボクシングをやっていた人が、途中で「ちょっと前から独学でテイラリングの勉強してきました」なんて身につく甘いものじゃないと思うんですがね。

  5. 川久保さんも独学です。笑

  6. 因みにあなたが技術者なら経糸はこだわらないんですか?

  7. ユースケのアバター
    ユースケ

    荒士をバカにすんじゃねえ!

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