名ブレンダーの仕事

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明治製菓が展開している100% Chocolate Cafeというものがある。
その商品の中に、世界各地のカカオ豆を単一品種のみで作ったチョコが22種類ある。
先日のサロンドゥショコラで全種類買い揃えて、少しづつ味見しているのだけど、やはり単一品種で食べ比べると、ずいぶん風味に幅があるんだなと感心した。

しかし「どれもチョコ!これとこれと3:7で混ぜても7:3で混ぜても、俺はかまわない!」と思ってしまうのだけど、これらの品種と、年度や地域の出来不出来を考慮しながら、必ず同じ味に仕上げるブレンダーに興味を持った。

そういえば色々ところで、色々なブレンダーの話を読んだことがある。


ウイスキーブレンダーの話
タバコブレンダーの話
缶コーヒーブレンダーの話
カップラーメンのスープブレンダーの話

インタビュアーが吸っていたタバコを見て、その場にある草をブレンドし「これで、限りなくあなたのに近いタバコになったはずです」と再現してみせる。(年によっても、まったく同じ味の草にならないはずなのに)
他社の缶コーヒーを飲み比べて、このコーヒーとこのコーヒーが同じブレンダーの商品だと判別できる。(ブレンダーのクセが出るという)

記事を読む限りでは、神がかったような味覚と想像力の持ち主に思える。
しかし、もしかすると或る程度のセンスのある人であれば、そういうことは出来るのかもしれない。
そうでなければ、味を引き継いでいけないわけだから。

共感覚というの概念あって、”甘い声”(味覚+聴覚)とか”寒い色”(触覚+視覚)みたいな、各感覚が混ざった感覚をさす。
たとえばオーケストラの譜面を書く人というのは、音を視覚として捉えているのではないか?という話がある。
ある名作曲家の音楽を聴くと、あれだけの楽器を絶妙に使い分けるには、視覚的に意識して書いたとしか思えないという。
それは、感覚の中でもっとも鋭敏な差を検出するのは、視覚であるからなのだそうだ。

ブレンダーも、そうやって共感覚を持っている人を磨いていくことで、できるようになるのかもしれない。

そしてブレンドというものは、基本的に個性をぼやかしていくことだろう。
混ぜる原種には、それぞれの個体差(カド)があり、それはそれだけのオリジナルだから再現は不可能である。
だからその特徴を把握した上でそのカドを取るようにブレンドし、混合物に方向性を与え、求めるポジションへ落とし込む。
これこそがブレンダーの仕事なのではないかと思った。

混ぜることで極まったものはできなくなるが、きちんと方向性をつけることで、個性を感じるものに仕上げるのだ。

おや?
これは人間社会でも一緒じゃないか。
まさに法人という概念がそうで、個人個人はそれぞれバラバラでも、集団としてはソニーのカラーが出たり、ユニクロのカラーが出てくる。
それはその混合物自体に、それぞれのカドを隠すだけのボリュームがあることと、ブレンダーの方向付けによるものだと思った。

読んだ記事では、名ブレンダーたるもの作る味のイメージが明確であることが必須だとある。
これもまた人間社会の名ブレンダーしかりだ。

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sol-designのTシャツですが、再販売が好評なようです。
在庫がずいぶん減ってきています。


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