モードの背景

今回の記事は、多くの推測が入っています。
また、メンズモードを基本に書いています

最近のファッション誌を見ていて思うのが、カジュアルなモードがほとんど無くなったということ。

一昔前、雑誌で見るモードは、色があって、品のいい少年が着るような格好が溢れていた。
ブランド名でいうと、ジョゼレヴィアパリ、プリドボテ、クリストフルメール、ポール&ジョー、リチャードエドワーズ…

いわば、小洒落た日常着という感じか。

しかし、最近の雑誌を見ると、タキシードやジレなどのフォーマルテイストだったり、ダメージ加工のロック服が主流のようだ。
上品さというより、ワイルドさを醸している。
また、かなり細身。
(そして私が好きだったのは昔の服で、今のロックテイストは着られないので、ファッション離れが進んでいる)

流行がそうやって移ろっていくことは、自然なこと。

しかし、気になることがある。
先に挙げたデザイナーの多くが、ブランド閉鎖や引退に追い込まれていることである。
ルメールはなんとかカムバックしたけれど、その予断は許さない状況にあるように見える。


世界を見回してみると、モードというのは大人向けの服であるといえる。
あんなに高級な服は、金銭に余裕のある大人しか買えないし、実際、購入するのは大人(そしてメンズモードの多くの場合はゲイ)である。
若い子で買うのは、ごく稀なファッションフリーク。

しかし不思議なことに、モードのデザインは明らかに若者を向いている。
なぜだろうか。

世界から見て異例なことに、日本でのモードのメイン顧客は若者である。
(日本のフォロアーとしてアジアも追随し始めてはいるが)
そしてなんとその日本が、もっとも大きなモード消費国になっている。

その辺の背景は、おそらく
マスコミに弱い日本人→マスコミの流行情報操作(コレクションという権威の裏打ちもアリ)→日本の若者の傾倒
だと思うのだけど、その消費購買力はモード発信者へのフィードバックを伴う。

つまり日本の若者が買う服が、モードの発信に大きな影響力を持ってしまっているのではないか。
(TOKYOストリートファッションがデザイナーをインスパイアするというのとは、別の意味で)

コレクションを発表するブランドでも、多くの場合小さい規模で、資金繰りに困窮しながらやっている。
それは実情を知らない人にとっては、想像出来ないほど。
日本でサインをねだられるようなデザイナーであっても、モード史に残るようなデザインをするデザイナーでも、来期はコレクションを開けるだろうか?と不安を抱えていることが、ザラにある。
電話をかければデザイナー本人が出るということも、よく聞く。

そんな彼らにとって、日本の市場は魅力的なわけで、日本で大きな取引が出来れば経営が安定すると考える。

大人が着るはずのモードが、どうしてこんなに若者向けの服ばかりなのか?
なぜモデルが若い子ばかりなのか?
ということは、その辺に根拠があるのではないかと思う。

一世風靡した、かのジャンコロナは、ヴィアバスストップとの取引を打ち切られるとき
「オレを殺す気か!?」
と叫んだと聞いた。

モードが若者を向いていることの理由付けは、推測であるけれど、日本の若者の向く方向が、多くのデザイナーの生殺与奪に関わっているのは、おそらく確かだろうと思う。

-PR-
楽天でクリーニングなんてのを見つけました。
スーツはドライクリーニングだけでは汗など水溶性汚れが落ちないと聞きますけど、ここならば落としてくれそうです。
1万円以上だと送料も無料のようなので、今度試してみたいと思います。


Comments

“モードの背景” への6件のフィードバック

  1. 伯父さんのアバター
    伯父さん

    初めまして。
    「それは違うんじゃないの!」と、思う所を探してみたのですが、納得がいくばかりです。
    個人的には、モードといえば値段も高く、気品のある物、精神的や価値を見分ける力がついてきた人が着るものだと思っています。(辞書に書いてるモードとはほど遠い考えですが)
    しかし、今は値段を維持し、他のレベルが下がったように思います。
    もし、これを変える簡単の方法といったならば、ファッション雑誌が変わる事だと私は思います。

  2. 10代です。
    日本の若者には、生活費を削ってまで服を買う人が数多くいます。そうやって買った服を着ても、余裕は生まれないでしょう。
    もちろん、親が裕福であれば話は別ですが、それでも、身分にあった服装があります。(この前、某雑誌のスナップで、17歳の高校生が全身総額70万なんて人がいました)

    モードは、精神的にもお金にも余裕がある大人にこそ着て欲しいものです。

  3. margielamarniのアバター
    margielamarni

    おっしゃることは納得できます。ただお書きになっていることが、若者がブランド品を買うこと、さらにはそれがデザイナーのクリエイションに影響すること、を否定する根拠にはなっていないと思います。確かに海外ではモードの購買層は日本のそれよりもかなり大人ですが、だからといって大人向けの服を作るのがモードだということにはなりません。私はロランバルトの言うようにモードとは「本来は存在しない自己を追い求めること」だと思っています。その点から考えれば、まだアイデンティティの定まらない若者が(経済状態さえ許せば)モードに飛びつくのは必然であり、モードが若者を指向するのも必然ではないでしょうか。問題は若者がモードに影響を及ぼすことではなく、モードがしっかりとしたコンセプトを持ち得ないまま大量生産されていることではないかと私は思うのですが。

  4. ジョアン・エントウィスルの「ファッションと身体」を読んだのですが、
    昔は、ブルジョワ階級とプロレタリア階級がはっきりと別れていて、
    高級服(モード)を買える層もブルジョワ階級の人間だけでした。
    今の日本(最近は変化してきているようなので、少なくとも今までの日本)は一億総中流で、
    ほとんど誰でも、望めばモードの服を買うことができるということが強みであるように思います。(「MDブランドの意味」の記事と同じような意味で)
    確かに、日本人の流行に流されやすいという性質はある種の危険性を孕んでいますし、分不相応だと思う気持ちもわかります。
    しかし、それは将来モードをひっぱっていく様な人材が育ちやすい土壌でもあるのではないかと思うのです。
    >甘木さん
    私は直接彼を知っているのですが、彼は開業医の息子ですし、自分で稼ぐ手段も持っているようなので、金銭面は問題無いと思われます。
    そして服飾の講座にも通い、その歳にして業界にある程度のコネも持っています。
    その上、(直接関係はありませんが、)彼が通っている学校も、東大進学率日本一と目されているところで、
    単に流行に流されて高い服を買って満足している訳ではないと思います。
    私は、彼が将来モードをひっぱっていく様な人材になるのではないかと密かに期待しているのですが。
    もちろん、高校生ごときがモードの服を着て…という気持ちは理解できます。
    しかし、それくらいの情熱を持った若い芽は、モードの未来にとっても必要なものではないでしょうか?

  5. 70万はさすがにwwww
    いや、一般常識で考えてさ。

  6. >伯父さん
    日本を追っているアジアは別として、少なくともヨーロッパには日常的着こなしを扇動するようなファッション誌は見当たりませんでした。
    洋服文化の根付いていない日本には、そういうファッション教育誌はあってもいいのかも知れませんが、それとハイファッションが結びついているところは異常なのだと思います。

    >甘木
    私は大人が着ることを想定したモードであって欲しいと思っています。

    >margielamarni
    貴重なコメントありがとうございます。
    最後に挙げられた問題点は、そのとおりだと思います。

    さて、おっしゃるとおり若者向けのモードが許容されることは納得できますが、ではそうして若者向けというのを少し拡大して、小児向けのモードというのが生まれてしまった場合、私にはおかしな現象に思えます。
    一見極論に思えるかも知れませんが、ナルミヤインターナショナルに代表される、親からの押し付けでないセルフセレクティヴな小児ファッションが出てきている以上、現実的な話です。
    もちろん現実に起こることは、需給関係によるものであり、否定すべきことではないのかもしれません。
    ただの私の希望であるというのが、落としどころだと理解していただけば幸いです。

    >高橋
    個人的にはそのように世界を牽引するような人材の登場は、ある程度の基本的土壌があれば、あとは教育と(才能が萌芽する)偶然性だと思います。
    音楽に熱意を傾ける人がこれだけいる日本で、世界を牽引する人がどれだけ生まれたでしょうか?
    もし彼が”日本での格好を意識してない”ならば別ですが、日本ならでの格好をしていて、いずれそこから外れることは、ただの横滑りでしかないと思えます。
    もしかすると日本でのモードは引っ張るでしょうが、世界のモードを引っ張るのに、彼のモードの消費はあまり関係しないのではないかと思いました。

コメントを残す