立木は眼にした写真的な光景を撮りそこねたとき「網膜に二度と出会うことのない名作がたまっていく 」という。
その“名作”と同じ写真を撮ることは決してかなわないのだと。
シャネル・ネクサス・ホールでは9月1日より9月29日まで立木義浩写真展を開催します。
立木は1958年に写真家として活動を開始して以来、ファッションやポートレート、広告など、さまざまなジャンルを横断的に撮影してきました。写真作家として注目されたきっかけは、1965年に雑誌「カメラ毎日」誌上で56ページにわたって掲載された「舌出し天使」です。1人の女性を主人公に自在なカメラワークで都市のファンタジーを表現したこの作品は、同時代の写真家たちに大きな影響を与えました。その後も、女優・加賀まりこをヒロインに展開した『私生活』(1971)、戦後の日本に大きな影響を与え続けているアメリカを旅し、その眼で変わりゆく大国の素顔を捉えた『マイ・アメリカ』(1980)、家族の絆が感じられる“瞬間”を写し留めた『家族の肖像』(1990)、スナップショットの手法で日常のなかのドラマをあぶり出した『風の写心気』(2006)等の写真集を出版。今秋には、かつての作品に未収録カットを加えた『舌出し天使』が出版予定です。
『Yesterdays 黒と白の狂詩曲(ラプソディ)』は立木義浩の最新作です。日常のなかでふと眼にした光景にレンズを向けるスナップショットを軸に、4人の女性とのフォトセッションを交え、構成されています。デビュー以来、一貫して取り組んでいたモノクロ写真は私たちの眼に映る世界を黒と白に変換することで、ふだんは意識していない光と影を強く意識させます。立木は光によってつくりだされた黒と白の世界に生々しいリアリティと、現実の切れ目から不意に現れる幻想的な世界を逃さず撮影しています。
立木 義浩 写真家
1937年徳島県生まれ。1958年東京写真短期大学写真技術科卒業後、アドセンターに入社。1969年にフリーランスとなり、女性写真の分野やスナップ・ショットで多くの作品を発表。広告、雑誌、出版などの分野で活動し、現在に至る。第9回日本写真批評家協会新人賞(1965)、日本写真協会賞年度賞(1997)、日本写真協会賞作家賞(2010)など受賞歴多数。主な写真集に『小女』、『Tōkyōtō』、『étude』、『動機なき写真』などがある。また、立木の名を世に知らしめた1965年のデビュー作『舌出し天使』が、2018年秋に出版予定。
INFORMATION
会期:2018年9月1日(土)~9月29日(土)(入場無料・会期中無休)
時間:12:00~19:30(9月14日(金)は17:00まで)
会場:シャネル・ネクサス・ホール
中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
問い合わせ:TEL 03-3779-4001
URL: http://chanelnexushall.jp/program/2018/yoshihiro_tatsuki/