Guild of Crafts~靴作りVol.4-5~

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続いて、最後の仕上げ。
まず、磨き終わった靴から木型(ラスト)を抜く作業をする。

この木型抜き作業は、
専用の台に木型ごと靴を一旦固定し、
靴だけを抜いた後、変形した木型を元に戻す、
といった要領で行う。


まず、木型を専用の台に固定する前に、
吊り込みのときに、アッパーと木型を固定するために
かかとの部分に打った小さな釘を抜いておかなければならない。
この釘を抜かないと、どんなに踏ん張っても木型が抜けない
という、悲しい出来事に直面してしまうのである。

釘を抜いた後、木型を専用の台に固定する。
そして、靴のかかと部分とアウトソールの底面をしっかりと持って、
かかとを持ち上げるように、ソールを押し下げるようにしながら、
木型が変形するのに任せつつ、木型から靴を引っ張り出す。

木型を台に固定して靴を引っ張り出している様子は以下の通り。


(画像をクリックすると拡大します。以下同様)

正しく力が加わっていると、
木型が真ん中から半分に折れ、靴を抜くことができるのである。

木型が半分に折れている様子は以下の通り。

講師の方に、片方の木型を抜いてもらったので、
もう片方を自分で抜いてみようとしたが、なかなか抜けない。
やはり、か弱い女性には無理なのか、と思ったところ、
「それ、釘抜いてないでしょう」と、
講師に指摘されてしまった。
釘を抜いた後、気を取り直してもう一度・・といきたいところであったが、
力尽きてしまったので、またもや講師の方にもう片方の木型を
抜いてもらった。
結局、木型抜きは全くやってない。

木型を抜いた直後の靴の中の様子は以下の通り。

吊りこみのときに打った釘の跡が、
インソールに沢山残っているのがおわかりいただけるであろう。
何度も釘を打ち直したので、
インソールが穴だらけになってしまった。

次に、木型抜きの前に抜いた小さな釘を打つための、
かかとの部分から飛び出した耳の部分を切り取る。

耳の写真は以下の通り。
念のために書いておくが、白いやつが耳である。

この耳の部分を市切と呼ばれる器具を使ってきれいに切り取る。

市切の写真は以下の通り。

この作業はアッパーを傷付ける恐れもあるし、
素人ではきれいに切り取ることが難しいので、
アシスタントの方にやっていただいた。

次に、かかと敷き。
インソールのかかとの部分の上に、きれいな革をのり付けする。
これで、かかとの部分に見える釘の跡が見えなくなるし、
見た目にも美しくなる。
ちなみに、インソールの土踏まずから先には、
この革がないので、釘の跡が見える。
この釘の穴が、ハンドソーンウェルテッド靴の特徴ともいえるだろう。

そして、最後に、靴紐を通す作業。
もともと私は靴紐を通すのがとても苦手なので、
ここにきて最後の難関、といった感じである。

ちなみに、いつもは靴を買ったときに、靴屋さんに
紐通しをしてもらっているのである。

私の靴は鳩目が6つあるので、
鳩目が複数の場合は始めに左右同じ長さにする、とか、
その後は1個飛ばしの要領で紐を通していく、とか、
講師の方が色々と説明しながら直接教えてくれたのだが、
結局、今もあまり理解していないままである。

とりあえず、教わるままに通してみたら、ちゃんと紐を通せたし、
これを自分で解くことはこの先ないと思うので、
理解していなくても特に問題はないだろう。
解けたら他人に頼んで紐を通してもらえばいいし。

また、「蝶結びがいつも縦になるとです(ヒロシ風)」と講師に主張したところ、
「それはまた別の問題ですね」と言われ、
結局蝶結びは教えてもらえなかった。
仕方ないので、近くにいた他の生徒に教えてもらった。
情けない話である。

以上でプライマリーコースでの靴作り講習はおしまい。
今回は、作業が多かったわりに、
1つ1つの作業に時間がかからなかったので、
午後6時30分には作業が完了していた。

出来上がった様子は以下の通り。

ついに立派な靴・・・に見えるのは、本人だけではないだろう(と信じたい)。

ちなみに、少し斜めからカッコよく撮った様子は以下の通り。

靴の光り具合が見事としかいいようがないであろう(と思いたい)。

講習が終わった後、簡単な修了式があり、
修了証書をいただいてしまった。
修了証書もお見せして自慢したいところであるが、
フルネームがばれてしまうのでやめておく。
これでも、知名度は高いのだ。

ちなみに、ギルドの靴袋と紙袋をプレゼントしていただいたので、
それに靴を入れて持ち帰った。

講習をやったことで、靴の構造を理解することができたし、
ハンドソーンウェルテッド靴の手間や吊りこみの大変さを
知ることができた。
また、靴の製法にも興味が出てきて、勉強したので、
靴に少しだけ詳しくなった。
そして、初めての本格靴が自作、という
なんともヘンテコな本格靴デビューも飾れた。

それから、講師の方とお友達になることができた。
現役の靴職人とメル友なんて、カッコよくね?

実は、他にも是非ともお友達になりたい方がいるのであるが、
今はお近づきになるべく、作戦を練っているところである。
ちなみに、この方は、ドリスとマウリツィオペコラーロを
ギルドのオサレなビスポーク靴と合わせつつ、
サラリと着こなす方である。

なお、現在は、春から始まる靴講習や、
ギルド以外の靴職人が開く講習の受講も考え始めたりしている。
あれだけ大変な思いをした上に、
講師の方にムチャクチャ助けてもらった分際で
この期に及んで、次の講習を考えるなんて、アホな次第である。

おしまい

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7件のコメント

  1. やこさま

    今回も楽しく拝見させていただきました。文章も、とても読みやすくて、楽しかったです。とても多才でいらっしゃるのですね。

    ところで、私は北海道に住んでいるのですが、将来北海道で靴作りをしたい人は、お近くに居られませんでしょうか。いきなりですみません。靴職人さんも高齢化が進んでいて、後継ぎが居られないようです。最初の修業のうちは手当てが少ないと思いますが、脚に障害のある方などの靴も含めて、ご興味のあるホープをご存知でしたら、是非是非、教えてください。もちろん、無理は全然言いませんので。

    ちなみに私は、靴好きの人が集まる、山下大輔様の掲示板によくお邪魔させていただいております。

    やこさまもよろしかったら、是非カキコしてください。山下様も喜ばれると思います。

    春からの講習編も楽しみにしております。

    また、お邪魔します。

    失礼いたします。

  2. お疲れ様でした。
    全体を通して、とてもわかりやすく、
    そして楽しくまとめてありますね。
    ソールを変えてまで大事に履きたいと願う女性靴の礎にもなり得る出来です。

    仕上がった靴がもの凄くカッコイイ。

    こんな靴履いてる女性いたら惚れるね。いや、惚れさせてください(笑)

  3. サンタクルゾーさんへ

    記事、楽しんでくださったようで嬉しいです。
    多才だなんて・・ポッ(図に乗りました)。

    北海道の職人志望さんですか・・・。
    沖縄なら知ってる人がいるんですが、北海道の知り合いはいないです。
    お役に立てずすみません。

    山下大輔様の掲示板、今度探してみますね~。
    でも、靴のこと全然知らないので、ちょっと怖いなあ(笑)

  4. 靴狂のさんかくさん、やっと書き込んでくれたのね!(笑)
    待ってました~!

    仕上がった靴、今度見せるね。
    アッパーの傷を見たら笑われるんだろうなあ。。
    私に惚れている人、沢山いるから
    さんかくさんも仲間入りしとく?(笑)

  5. やこ様

    お返事ありがとうございます。

    沖縄出身の方がいらっしゃるのですね。沖縄には「大田製靴店」 098-866-6453 というお店があるそうです。2万円からオーダー可能だそうです。今度遊びに行った時に寄ってこようかな?沖縄仕様のギリーシューズ?

    山下様の掲示板では六義という、銀座に出来るビスポークのお店で盛り上がっているようです。

    出来ますれば、やこ様によるレポートも拝見できましたら、甚幸です。

    では、失礼いたします。

  6. はじめまして

    靴作りレポート大変参考になりました
    全部まとめて印刷したら立派な「靴作り教科書」になりました。

    次のレポートを楽しみにしております

    では、失礼いたします

  7. kissmejapanさん、コメントありがとうございます。
    しかも、印刷していただいたなんて・・光栄です。

    靴は深いですもんね~。
    そのうち、ビスポークやりたいなあ・・と夢はふくらむばかりです。

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