正式にMDブランドという呼び名があるのかは知らない。
ここではトレンドを意識して、売れ線の服を作るブランドという意味で使いたい。
MDブランドとは、例えばコムサデモードやアンタイトルといったブランドである。
巷で「丸井系」と呼ばれているブランド群も、この枠に入ることが多いと考えられる。
MDブランドは、ファッションマニアからは「パクリ」「安モノ」といった評価を下され、お洒落道入門者向けブランドという扱いを受ける。
ファッションデザインの意匠保護が、どの程度確立されているかわからないが、現在のアンタイトルメンのディオールオム傾倒ぶりや、かつてイネドオムがプラダスポーツそのまんまデザインをしたところから考えるに、ほとんど保護されていないと思っていいだろう。
MDブランドはそうして旬のブランドのデザインを模倣し、その時代でお洒落としているイメージを借用する。
そしてそれは、確かに売れているのだ。
日本経済新聞社が発行する市場占有率2004年版においては、ファイブフォックスのシェアは、紳士服部門では、3位(3.6%)、婦人服部門では、5位(3.4%)となっている。
先日コムサデモードメンの服を見たが、正に今のトレンドの服である(つまりディオールオム)。
ここまで、的確に売れる服を作るというのはある意味評価せざるを得ない。
かつてジグソーおよびUTHのデザインをしていたクリスベイリーは
「安くて最新の流行を、若くてお金のない子達に、手軽にモードを楽しませるブランド」
とコムサを褒めていた。
H&Mが台頭する前の発言だ。
それにコムサのクオリティは、H&Mに比べて遥かに高い。
例えばシャツも、しっかりした工場で作っているという記事を読んだことがある。
以上のことを考えたとき、このようなMDブランドは決して非難の対象になるものではなく、モードを普及させ、ファッショニスタを育てるのに必要であると考える。
ファッションに興味を持ち始めたときに、ハイブランドしか存在しなかったとしたら、それはお金の有る富裕層のみしか触れられないもので終ってしまう。
そこにコムサのようなエントリーブランドがあることで、その奥へ続いていける。
またMDブランドはエントリー以降も、お洒落を楽しむのに非常に有用である。
私も稀に覗くが、案外にいい服があることがある。
「パクリだから」「刺激が無い」からと「卒業」してしまう人も多くいるが、適当に付き合っていくのも良いのではないかと思うのだ。
「所詮MDブランドレベル。それで満足するなよ」という気持ちは私もよくわかるが、単なるお洒落好きを超えた服好きやファッションマニアの目で見るのでなく、ある意味で等身大のお洒落を楽しむ彼らは、それはそれで正しいのだと思いたい。
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