ある一人のスターの登場によって(下)

プレタポルテ時代が訪れてからのを時代を代表するデザイナーについて述べる。

【80年代】
コムデギャルソンの出現というのは圧倒的である。
女性を美しく見せるための存在していたモードが、ここで歴史上最大の転機を迎える。
それまでの美とは全くかけ離れたコンセプトで、美しい服ではなくひたすら強い服を作った。
美の概念の崩壊と再構築。


その手法は一貫性無く毎回新しいテーマとアプローチで服を作るというものだ。
この手法はある意味わかりやすい。(しかし継続するのは不可能に近い)
他のデザイナーがこの手法を真似をしたとしても、全く新しいアプローチで服を作るという点においては、誰の真似でも無くなるのだ。

ジョルジオアルマーニの登場も特筆すべきものだ。
レディースに隠れていたメンズモードが、この時初めて表舞台に立ったのである。
そのデザインはウーマンリヴという世界のムーヴメントに乗り、メンズ→レディースという逆の潮流をもたらした。
またモードがモードの世界を超越し、ファッションに興味を持たない人間にまで影響した、現在まで唯一のムーヴメントを作った。

【90年代】
トムフォードの時代といって良いだろう。
グッチブランドの復興に成功し、落日を迎えたと見られた他のブランドにブランド復興が可能という希望を与え、復興を促す流れを作った。
これで復興に成功したのはディオール、ジヴァンシー、バレンシアガ等枚挙に暇が無い。
トムフォードに憧れ、エンニョカパサがEnnio CAPASA for CoSTUME NATIONALとしたのはトムフォード時代を証明する一片だろう。

【2000年代】
過日トムフォードが引退してしまい、2000年も4年が過ぎた現在、レディースにおいて新しいスターデザイナーは登場していない。
しかしメンズモードにおいては、エディスリマンというスターが登場している。
ラフシモンズ初期のデザインを起点とする、少年性を湛えた、細くナイーヴな服。
また従属と反抗を備えた服。
人生の成熟によって失われてしまう、イノセンスと雄性の共存する少年性は、男性にとって失いがたい貴重な瞬間であり、永遠の憧憬である。
既にエディのデザインを意識する服が登場しており、彼の時代がいつまで続くのか、興味深くある。

次のスターは誰だろう?


Comments

“ある一人のスターの登場によって(下)” への4件のフィードバック

  1. 某所での記事を展開させたやつですね。
    モード界の流れが俯瞰できますね。

    確かに2000年代にはレディースのスターデザイナーがいないですね・・・
    90年代のトムフォードも先の三大デザイナーと比べるとクリエイティビティという側面では比較にならないですし。
    80年代以降はファッションが細分化・ビジネス化しすぎちゃって個性を出せないのかな。
    しかし80年代の川久保氏もそういう風に言われている中モード界を席巻したわけですし。
    独立系のデザイナーから聞こえてくるのは資金難の話ばかりですし、ビジネス化のほうが問題なのかな。

  2. ギャルソンやそれ以降のゴルチエ、マルジェラという、リアルクローズとは言い難い服が、ビジネスを半ば無視しつつもビジネスになっている事実があります。

    モード界を牽引する革命性は無いものの、V&Rには新たなクリエーション手法とビジネスの共存を感じますね。(彼らはしっかり売れる事を意識していますが)

  3. オリジナリティに溢れる文章が好印象でした(笑)

  4. この辺、つつくととやかく言われそうなところなんで、ヒヤヒヤしています(^ ^;)

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