しばしば語られる事だが、デザイナーは何をどこまでやっているのかという疑問がある。
まさかコレクションをやるようなデザイナーが、デザイン画、テキスタイル、パターン、縫製、コーディネートを全て一人でやる訳はない。
アトリエスタッフがいるし、外部のスタッフもいる。
かの川久保玲は、自身で服を作るわけでもデザイン画を描くわけでも無い事は有名だ。
彼女のやり方を聞いた事がある。
あるシーズン、突然アトリエのスタッフを招集するなり、彼らの目の前でハンカチを落とした。
「見て!これ!私が作りたいのはこれなの!」
そう叫び、スタッフ一同「はいっ!」と応えたとか。
このイメージ伝達方法もすごいし、それに応じるスタッフもすごい。
他にはどう考えても胡散臭いデザイナーもいるようで
「僕は今期、炎をテーマにしてるんだ」というので、外注を受けたデザイナーが絵を描いて見せると
「そう!僕が作りたいのはこれだよ!」
とノタマウ人がいたり、
イメージが余りにも抽象的で何度訊いてもよくわからないので
「もっと具体的に教えてください」と言ったところ、気まずそうに他のブランドの写真を持ってきた人がいたとか。
ナンバーナインの宮下氏はもともとバイヤーであるから、服作りの勉強はしていないがパリコレにまで出ている。
またモデルからデザイナーになったユアンやリヒトもいる。
ファッションデザイナーになりたい!→服作りの勉強をするために専門学校に行く
という図式は、今や、崩れて来ているのかもしれない。
差し詰めデザイナーと言うのはコンダクター(指揮者)のようなもので、プレーヤーを指揮して、自分のイメージする世界を構築する事なのだろう。
つまりデザイナーになるために服作りの技術は必ずしも必要でなく、
確固としたイメージを持つことと、
それを具現化するスタッフを集めること、
そして彼らを操る指導力、
あとはビジネスセンスが必要だと言えるだろう。
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