洋服の買い始めた頃は、多くの人が、販売員の接客をわずらわしく思うものだ。
「どうぞ広げて見て下さい」
「試着してみて下さい」
「それ良いですよね」
「今日(もしくは最近)入荷したばかりなんですよ」
「最後の一点なんです」
こういった決まり文句。
これで購買意欲をそそられることがあるのだろうか?
私自身ではそういった言葉で購入を決意した事は一度として無いし、友人に聞いても大抵は同じだ。
ということは、おそらく販売している方にも当てはまるわけで、自分が買い物客になったとして、そういう陳腐な言葉をかけられても、何の役にも立たないわけだ。
それから話題が弾むことも余り無い。
販売員をしていると、そういう言葉を言わないといけないような強迫観念を持つようになるのだろうか?
それと、まるで客がモノを知らない人のように扱うことも困る。
本当にマニアックな情報でもなければ「ご存知かもしれませんが」という態度で接しないと、失礼ではないか。
最近ではその辺の販売員より服の知識があることもあり、聞いてもいないのに自慢気に、薀蓄を披露されるのはかなわない。
以前渋谷にて服を見ていると「そのブランド、パリコレに参加しているんですよ…」とブランドの説明を始めようとしたので、なんだこいつと思い「ええ、出身地は~で、~の元で経験を積んだんですよね」とかますと、すぐに追っ払うことができた。
ところで商売の本質は、いかに相手に役立つかである。
とすると、彼ら販売員の役割はなんであろう。
服を買うときの決定因子は
・服が気に入った
・値段が気に入った
が多く、稀に
・販売員が気に入った
・店が気に入った(この多くは接客によるが)
ではないか。
そこで販売員に求められるのはファッションアドバイザーとしての役割だ。
販売員はレジを打ち、包装し、雑用をするという、作業の人であってはならない。
ではファッションアドバイザーとしての販売員の役割は
1、製品知識で商品の魅力を伝え、メンテナンスなど相手の疑問点に答える。
2、客の気付かない視点からのアドバイス。
3、客のワードローブとのコーディネートアドバイス。
4、商品以外でも客の求めている情報の提供
1はマニアックに知っている必要は無い。(そこまでの情報を必要としている客は多く無い)
2はバックスタイルの確認や、それに伴う他のサイズ、パターンでの試着の提案。さらに客は気付いていないけれど、似合う服の紹介(新しい引き出しを開けてあげるとでも言おうか)
3は本来大変な重要なことであるのに忘れられがちだ。単品としての素晴らしさや、店内の他の商品とコーディネートして抱き合わせ販売を狙うのでなく、相手の背景に合わせる。
4は雑談などの部類に入るもので、客を充足させる話。
難しいと思うが、客に一方的に話しかけるよりも、話を聞くというのは(営業的に言えば相手に話させる)優秀な販売員としての第一歩ではないだろうか。
また、客に合わせた接客というのは、客のタイプにあわせるというよりも、その人だけに合わせたオリジナルの接客を言うのだと思う。
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