作家の仕事場―25人のデザイン・ジャイアント
デザイナーを志す人間に必須の書物。
田中一光、横尾忠則、柳宗理、内田繁etcとまさにデザインジャイアントたちのインタビュー集だ。
私がこれを買った一番の理由は山本耀司と新井淳一のインタビューが読みたかったからだ。
山本耀司は能弁なデザイナーとして知られ、独自の信念から出てくる名言も多い。
このインタビューで響いた文を挙げてみる。
山本「ここ10年くらいスタイル画を描いていないです。今はイマジネーションが物凄くて、絵に描けないです」
山本「ボディに布を置き始めたところから始まります。贅沢な仕事ぶりで、シーチングを使わず、本物か、それに近い風合いの生地を使う場合がありますから、おカネもかかります」
イマジネーションを想起させる生地を元に、生地とボディと対話するように服を作り上げていくということか。
音楽でも、この音色を使って曲を作りたいという事がある。そのようなものか?
山本「僕はデザイナーという職業でいながら、デザインって言葉が嫌いです。『画策する』とか『謀る』みたいな『悪だくみ』みたいな語感に近い」
今はデザイナーという言葉が一般的になっているが、彼としては一介のドレスメーカーであるという意識なのだろう。
山本「自分が衰えたせいか、鋏へのこだわりが薄くなってきちゃいましたけど『鋏またぐな』『反物またぐな』とか随分怒っていましたから。『刃と刃が触れ合う鋏には自分の癖があるから、他人のは絶対借りない』とか先頭に立って言ってました。最近は、ちょっとパタンナーの借りて、自分の髭を切りかねない(笑)」
ピナ・パウシュの衣装だったか?アシスタントも付けずに鋏を持って単身海外に行き、ひとりで衣装を作ったという逸話がある。今、そういう事が出来る本物のファッションデザイナーがどれほどいるか。
山本「パタンナー色の強い人で独立する人は少ないですね。生地の仕入れとか企画サイドの小物のデザイナーとやっていた人とかは、独立する人多いですけどね」
三宅一生の下からはコレクションで活躍するデザイナーが多く出ているが(もちろんコレクションに出るという事にこだわっても仕方ないのだが)、それに比べ、山本耀司の下からはエンニョ・カパサと田山淳朗、川久保玲の下からは渡辺淳弥くらいしか大物は出ていない。
これはどういう事なのだろうと思ったりする。
聞くところによると、三宅一生のところでは糸から勉強をするので、強みがあるという話もある。
「ファッションに対する第二軍的な扱いをいまだに感じますか」
山本「ああ、それは感じます。事業家とかビジネスマンのタイプに『俺はファッションは分からんですから』と分からないことを偉そうに言ってくる人がいます。20世紀というのは全てのデザインが、アートからデザインに移行して、その全てのデザインが流行現象になってファッション化されてしまったということなんです。だからこっちとしては『ファッション分からなければ、何も分からんでしょ』って感じなんですけど」
これは以前に多少触れた事がある。→学校制服の謎
ファッションはいつになれば文化として一軍入りを果たすのだろうか?
お洒落という自己主張は気恥ずかしいという、古き悪き文化によって一軍入りを阻害され続けている。
いつから若者がこぞっておしゃれをする時代になったのか定かではないが、その世代が日本のトップを担う次代がきたとき、ようやく一軍入りを果たせるかも知れない。
あと10年先?15年先?
いや、この加速する時流の中、到来は思いのほか早いかもしれない。
全文を読みたい方は購入しては?
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