StealthWealth ステルスウェルス。Stealth=隠密、Wealth=富。
15年程前プラダのナイロンバッグが流行った際に聞いた言葉です。
一見して分からないけれど、その裏で豊かさ・満足感が主張されているという、そういう概念をステルスウェルスと呼ぶそう。
プラダのナイロンバッグは、(結局は大衆化したのだけど)何の華やかさもない黒いナイロン地でありながら、実は軍用テント素材という丈夫さにこだわったものであり、かつプラダという一流ブランドのものであるということで、大流行しました。
プラダを知らない人には、地味なナイロンバッグですが、知る人にはそれが高級品であることがわかり、それを密やかに主張したいという、見栄と謙虚を包含した点が大ヒット理由であるという分析がありました。
自分が素晴らしいものを持っていると主張したい。しかしそれをあからさまに喧伝したくない「ほぅ、それはもしや…」と気付いて欲しい。
そういうムードを捉えたと言われています。
江戸時代などでは「粋(イキ)」という概念がありましたが、そういうものに近いようです。
Twitterで知ったブログがあり、過去のエントリーでブランドものを所持する精神について考察されていました。
「ブランドものを持つと言う事は価格と希少性と、そしてそうしたものに金を注ぎ込めるという意思の表明だ。ファッションが恋愛対象に対するアピールであるとしても、女性の財布がルイ・ヴィトンであることになにかを感じる男はそこまでいるだろうか。だとしたら、そこには自己満足というものが根深く関わっている。 しかし、それでもまだ納得がいかない。自己満足のためだとしたら、そこには真実自分の欲求に適合するもの、人とは違うものを求める熱意がはたらくはずだ。しかし、そう見えるか? みんな、なんとなく、しかたなく、でブランドものの財布を持っており、それなりの衣類を着ているのではないか?ここまで考えて、ようやくそれなりの納得にたどりついた。それはひょっとしてパスポートのようなものではないのだろうか。ヴィトンの財布を持っていること、ユニクロではないこと、そうしたことは「私は外見に気をつかっています」という意思の表明そのものであり、人の内実はそこまでファッションを希求していないのではないか」
G.A.W.「着飾ることの意味がまったく理解できない人のファッション談義」
そう。そうなんだよね。と指を鳴らしました。
「ブランドものを持つのは高品質で一生モノだから」というのはおためごかしです。
ぶっちゃけ、私はそう言い張る人を蔑みますよ。自覚せよと言いたい。
「かわいいじゃないですかぁ」そう言っているならば、寛容な目で見てあげます。
誰もが知っている、価値あるとされているものを持つことで、自分を位置づけたいのでしょう。
皆にわかるブランド所持は、一つにはこれが所持できるのだから劣っていないでしょう?という主張があり、もう一つは世間に表明することで、自分が大衆的であり異物でなく安全なんだと表明したがっているように思えます。
それに対しStealthWealthは、ハードルを設定しそれを越えてきた人とコミュニケーションを取りたいという欲求ではないでしょうか。
選民思想というか、意識というか、自分はちょっと違うぞという主張です。
この価値をわかる人がいるかな?と世間に問いかけている感じです。
みんなの仲間に入れて欲しい前者と、自分の仲間で固めたい後者。
俺は後者なんですね。
もちろん、デザインが好みだとか、リーズナブルだとか、使い勝手がいいという自分にとって物質的メリットがあっての話なのだけれど、その隠れている価値をわかって所持しているということに気付いて欲しい。見付け出したことを賞賛して欲しい。
そしてそれを理解できる人たちと輪を作りたいんですよ。
それって、若者が自分たちの間で通用する隠語を作って、コミュニティを形成するのに似てますね。
ところでStealthWealthって、隠した豊かさという意味っぽいけれど、実際にはチラ見せの愉悦という感じでしょうか。
なんだかんだで見えるようにできているんですから。
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